皮膚科とは
皮膚科は、皮膚・髪・爪・汗腺などのトラブルを診断・治療する診療科です。
皮膚は全身の状態を映し出す「鏡」ともいわれ、アレルギー、感染症、ホルモンの乱れ、ストレス、生活習慣、外傷など、さまざまな要因が関係します。
「かゆい」「赤い」「できものができた」「ただれた」「乾燥して皮がむける」「ほくろが大きくなった」「湿疹が繰り返す」「やけどをした」など、皮膚の変化や不快な症状があるときは、皮膚科が対応します。
皮膚科で扱う疾患は多岐にわたります。代表的なものには次のようなものがあります。
診察では、皮膚の状態をよく観察し、必要に応じてダーモスコピー(拡大鏡)や皮膚生検、培養検査、アレルギー検査、血液検査などを行って、正確な診断につなげます。
治療は外用薬(塗り薬)や内服薬によるものが中心ですが、症状や疾患に応じて冷凍凝固、光線療法、注射、小手術なども行います。
皮膚の病気は目に見える分、患者さまにとって不安やストレスが大きくなりがちです。
また、見た目だけでは診断が難しい疾患も多く、正しい診断と早期治療が非常に重要です。
皮膚科で診療を行う主な症状
帯状疱疹
帯状疱疹(たいじょうほうしん)は、赤く腫れた皮膚の上に小さな水ぶくれが帯状に現れ、強い痛みを伴うウイルス性の皮膚疾患です。
身体の左右どちらか一方に限って症状が出るのが特徴で、胸や腹部、背中、顔など、神経に沿った部位にあらわれることが多くあります。
中高年の方に多く見られますが、近年ではストレスや疲労、糖尿病といった病気などで免疫力が低下した若年層にも発症が増えています。
この病気の原因は、水ぼうそうのウイルスとして知られる「水痘・帯状疱疹ウイルス」です。
多くの人は子どもの頃に水ぼうそうにかかることでこのウイルスに感染しますが、治った後もウイルスは体内の神経節に潜んだまま残ります。
そして、年齢を重ねて免疫力が低下したり、強いストレスや疲れ、病気・手術などによって体調を崩したりした際に、ウイルスが再び活動を始め、帯状疱疹として発症するのです。
帯状疱疹の初期には、患部にピリピリ・チクチクとした違和感や痛みが生じ、数日後に赤い発疹や水ぶくれが現れます。
水ぶくれは次第にかさぶたとなって治癒していきますが、問題は皮膚症状が治まった後も続く「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれる後遺症です。
この神経痛は長引くことがあり、重症化すると日常生活に大きな支障をきたすことがあります。
特に高齢者では、強い痛みが数ヶ月から数年にわたって残るケースもあり、早期の治療と予防が重要です。
治療の中心は、抗ウイルス薬の内服です。
ウイルスの増殖を抑え、症状の進行を防ぐためには、発疹が出てからできるだけ早く治療を始めることが大切です。
また、痛みに対しては鎮痛薬や神経ブロックといった治療を行う場合もあります。
治療が遅れると、ウイルスが神経を傷つけて後遺症が残るリスクが高まるため、初期の「なんとなく痛む」「皮膚がヒリヒリする」といった段階での受診が勧められます。
なお、帯状疱疹はワクチンで予防が可能な病気です。
現在では、50歳以上の方を対象に、帯状疱疹の発症や重症化を予防するためのワクチン接種が推奨されています。
接種によって発症リスクを大幅に減らすことができ、もし発症した場合でも症状が軽く済む可能性が高まります。
特に過去に帯状疱疹を経験された方、日常的にストレスが多い方、免疫力の低下が心配な方には、予防接種を強くお勧めします。
じんましん
じんましんは、皮膚の一部が突然赤く盛り上がり、強いかゆみを伴う皮膚の疾患です。
発疹は円形や地図状などさまざまな形で、身体のどの部位にも現れる可能性があります。
多くの場合、出現してから数時間~24時間以内に自然に跡形もなく消えていくのが特徴ですが、くり返し発症することもあります。
症状が1ヵ月以内に治まる場合は急性じんましん、1ヵ月以上断続的に継続するものは慢性じんましんとされます。
じんましんは血中にヒスタミンという物質がつくられ、血管内の水分が外に滲み出て皮膚が腫れ上がる状態です。
その原因は多岐にわたりますが、実際には明確な原因が特定できないケースが多くあります。
一時的に起こる急性じんましんでは、食べ物(魚介類や卵、乳製品など)や薬、感染症、物理的な刺激(寒冷、日光、圧迫、擦れ)などが引き金になることがあります。
また、慢性的にくり返すじんましんでは、ストレスや疲労、内臓の疾患、自己免疫的な反応が関与していることもあります。
なお、じんましんはアナフィラキシーの初期症状の一つとしてあらわれることがあります。
アナフィラキシーとは、激しいアレルギー反応が全身に起きた状態のことです。
皮膚表面以外にも、皮下組織を含む皮膚および粘膜にもじんましんが生じ(血管性浮腫)、まぶたや唇、さらに気道の粘膜などが腫れ、場合によっては呼吸困難に陥ることもあります。
さらに血圧が低下してショック症状を呈し、命に関わる場合がありますので、まぶたや口がひどく腫れたり、急に息苦しさを感じたりした場合などは、すぐに医療機関を受診するようにしましょう。
治療の基本は、ヒスタミンという物質の働きを抑える抗ヒスタミン薬の内服です。
この薬によりかゆみや発疹の出現を抑えることができます。
症状が軽快するまでは一定期間、継続的に服用することが勧められます。
アナフィラキシーが疑われる場合には、即効性のある薬剤やステロイドなどを用いた対応が必要となることもあります。
じんましんは、くり返す症状を放置すると生活の質が低下し、治療が長期化することもあります。
慢性じんましんで長く悩まれている方には、必要に応じて血液検査やアレルギー検査を行い、食生活など生活習慣の見直しやストレス管理の指導なども行っていきます。
ヘルペス
ヘルペスとは、ウイルスの感染によって皮膚や粘膜に小さな水ぶくれやただれを引き起こす病気です。
一般的に「ヘルペス」と呼ばれるものには、大きく分けて二つの原因ウイルスがあります。
一つは「単純ヘルペスウイルス(HSV)」、もう一つは「水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)」です。
水痘・帯状疱疹ウイルスは、いわゆる水ぼうそうや帯状疱疹の原因となるものです。
帯状疱疹一方、単純ヘルペスウイルスには、主に「1型(HSV-1)」と「2型(HSV-2)」の2種類があります。
1型は、口唇や顔面に症状を起こすことが多く、「口唇ヘルペス」として知られています。
風邪をひいたときや強い日焼け、ストレス、疲れなどをきっかけに、唇やその周辺にチクチクとした違和感やかゆみが生じ、続いて小さな水ぶくれが現れるのが典型的な経過です。
数日でかさぶたとなって自然に治っていきますが、人との接触や食器などを介してうつる可能性もあるため、注意が必要です。
2型は、主に性器周辺に症状を起こす「性器ヘルペス」の原因となります。
性交渉などによって感染し、外陰部や肛門周囲にピリピリとした痛みやかゆみを伴う赤みが出現し、やがて水ぶくれができて破れると強い痛みを感じるようになります。
排尿時の痛みや歩行困難になるほどの不快感を伴うこともあり、特に初感染の場合は発熱やリンパの腫れなど全身症状を伴うこともあります。
ヘルペスウイルスは、一度感染すると神経節という場所に潜伏し、体調が崩れたときなどに再び活性化して発症します。
つまり、ヘルペスは「何度でも繰り返す可能性のある病気」であり、体力や免疫力が落ちたときに症状が再燃するのが特徴です。
また、感染しても症状が出ないままウイルスを保有している「無症候性保有者」も多く、知らず知らずのうちに他人に感染させてしまうこともあります。
治療の中心は、抗ウイルス薬の内服や外用です。
できるだけ症状が現れてから早い段階で治療を始めることで、皮膚症状や痛みの軽減、治癒までの期間の短縮が期待できます。
再発を繰り返す場合や、症状が重い場合には、予防的に抗ウイルス薬を長期にわたり(半年~1年)内服する「抑制療法」が行われることもあります。
初感染か再発か、また患者さまの全身状態や発症部位によって治療の方針は異なりますので、専門の医師による的確な診断が大切です。
当院では、顔や口元、陰部など、デリケートな部位にできるヘルペスの治療にも丁寧に対応しています。
「疲れると同じ場所にできる」「最近繰り返すようになった」「人にうつしてしまわないか心配」など、ヘルペスに関するお悩みがある方は、どうぞお気軽にご相談ください。
早期診断・早期治療が、つらい症状や再発を防ぐ鍵となります。
脂漏性皮膚炎
脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)は、頭皮や顔、耳のまわり、胸元など、皮脂の分泌が多い部位に起こる慢性の皮膚炎です。
年齢や性別にかかわらず誰にでも見られる皮膚のトラブルですが、大きく分けると、生後まもない赤ちゃんに見られる「乳児型」と、思春期以降に発症する「成人型」があります。
それぞれに特徴があり、原因や経過にも違いがありますが、共通して皮脂の影響が関係していると考えられています。
乳児型では、生後数週間から数ヶ月の赤ちゃんの頭皮や額、眉間などに黄色っぽいかさぶたのようなフケがついたり、赤くなってジュクジュクしたりすることがあります。
皮膚は比較的やわらかく、かゆみはあまり強くありません。
成長とともに自然に治まっていくことが多く、重症化することは稀です。
一方、成人型は思春期以降に発症し、年齢とともに繰り返す傾向があります。
頭皮ではフケが増えたり、顔では眉間や鼻のわき、耳の後ろなどに赤みやかゆみ、うろこ状の皮むけが見られたりします。
慢性的に症状が続くことが多く、生活の質(QOL)にも影響を及ぼすことがあるため、適切な治療が必要となります。
この疾患の発症にはいくつかの要因が関わっているとされており、皮膚に常在する「マラセチア」というカビの一種(真菌)が重要な役割を果たしていると考えられています。
マラセチアは通常は無害ですが、皮脂の多い部位で異常に増殖すると、皮膚の炎症反応を引き起こします。
また、皮脂分泌の増加、ホルモンバランスの乱れ、ストレス、生活習慣の乱れ、睡眠不足、ビタミン不足、洗顔や洗髪の方法なども症状の悪化に関与します。
治療は、皮膚の炎症を抑えるためにステロイド外用薬や抗真菌薬(マラセチアに対する薬)を用いるのが一般的です。
頭皮に症状がある場合は、抗真菌成分を含む専用のシャンプーや外用ローションが処方されることもあります。
かゆみが強い場合には、抗ヒスタミン薬を併用することもあります。
症状が落ち着いても再発を繰り返すことがあるため、継続的なスキンケアや日常生活の見直しも大切です。
予防には、皮脂や汗を適度にコントロールすることが基本となります。
洗顔や洗髪をこまめに行い、皮脂や汚れを溜め込まないこと、刺激の少ないスキンケア用品を選ぶことが大切です。
また、ストレスを溜めすぎない、睡眠をしっかりとる、バランスの良い食事を心がけるといった生活習慣の改善も、症状の予防や軽減に効果があります。
肌を擦りすぎたり、洗いすぎたりすることで、かえって悪化してしまうこともあるため、適切なケア方法を知ることも重要です。
稗粒腫
稗粒腫とは、皮膚の表面にできる小さな白い粒状のふくらみで、良性の皮膚腫瘍です。
特に顔にできやすく、まぶたのまわりや頬、こめかみ、おでこなど、皮膚の薄い部分にポツポツと見られるケースが多くなっています。
大きさは1〜2ミリ程度と小さく、基本的に痛みやかゆみなどの自覚症状はありませんが、見た目の問題やメイク時の引っかかりなどが気になることがあります。
この稗粒腫は、皮膚の表面が何らかの理由で閉じてしまい、皮膚の角質(ケラチン)が溜まって、排出されずに皮膚の下に閉じ込められることで形成されます。
原因としては皮膚のターンオーバーの乱れのほか、加齢や乾燥、摩擦、外傷などの皮膚への刺激が関係していると考えられています。
ほかに、目元のメイクやクレンジング、外用薬などの刺激でできることや、「二次性稗粒腫」として、やけどやニキビ跡、レーザー治療後などにできることもあります。
稗粒腫自体は良性で放置しても健康上の問題はありませんが、自然に治ることは少ないため、医療機関での処置が必要です。
当院では、局所を消毒した上で、専用の器具(針や細いピンセットなど)を使って皮膚に小さな孔をあけ、中の角質を取り除く処置を行っています。
短時間で終わり、出血や痛みもほとんどありません。
再発を防ぐためには、日常のスキンケアや皮膚への過度な刺激を避けることも大切です。
なお、ご自身で針などを使って稗粒腫を無理につぶそうとするのは非常に危険です。
皮膚を傷つけたり、細菌感染を引き起こしたり、色素沈着や凹みなどの跡が残ってしまうこともあります。
ご自宅での自己処置は避け、医療機関で適切に処置を受けていただくことをおすすめします。
ニキビ
ニキビは、医学的には「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」と呼ばれ、思春期から青年期にかけて多くみられる代表的な皮膚疾患です。
特に顔や背中、胸元など、皮脂の分泌が盛んな部位にできやすく、「見た目が気になる」「痛みがある」「繰り返す」など、年齢を問わず多くの方が悩まされています。
思春期の一過性のものと思われがちですが、大人になってからもニキビが続く「大人ニキビ」や、悪化して跡が残ってしまうケースもあり、適切な治療とスキンケアがとても重要です。
ニキビの直接的な原因は、毛穴の出口が角質でふさがれ、そこに皮脂がたまってしまうことにあります。
この詰まりを好んで増殖する「アクネ菌(ニキビ菌)」が炎症を引き起こし、赤く腫れたり、膿をもったりした状態に進行していきます。
皮脂の分泌が増える思春期に多い一方で、ストレスやホルモンバランスの乱れ、不規則な生活、過度なスキンケアやメイクによる刺激、乾燥などもニキビの原因となります。
女性では生理前後に悪化しやすいこともあり、体調や生活習慣の影響も大きく関係しています。
初期のニキビは、白く盛り上がった「白ニキビ」や黒ずんだ「黒ニキビ」として現れます。
これらは毛穴の詰まりに皮脂がたまっている状態で、まだ炎症は起きていません。
しかし、時間が経過すると詰まった内容物がアクネ菌の温床となり、やがて赤く腫れる「赤ニキビ」や、膿をもつ「黄ニキビ」に進行していきます。
これらの炎症性ニキビは、放置したり自己流でつぶしたりすると、ニキビ跡や色素沈着、クレーター状の凹みが残ってしまうこともあるため注意が必要です。
ニキビは保険診療でしっかりと治療が可能な病気です。
治療では、毛穴の詰まりを改善する外用薬(ディフェリンゲル、ベピオゲルなど)や、炎症を抑える抗菌薬の外用・内服を組み合わせて使用します。
症状の程度や肌質に応じて治療薬を調整し、炎症を起こしにくい肌環境を整えることを目指します。
外用薬は毎日継続することが大切で、効果が現れるまでに数週間以上かかることもあるため、焦らず根気よく治療を続けることが成功のポイントです。
また、治療と並行して、スキンケアや生活習慣の見直しも重要です。洗顔は1日2回を目安にやさしく行い、過剰な洗浄や刺激の強い化粧品は避けるよう指導いたします。
肌の乾燥を防ぐために適切な保湿を行うことも、炎症を抑えるうえで有効です。
さらに、脂っこい食事の摂りすぎや睡眠不足、ストレスの蓄積などもニキビの悪化要因となるため、生活全体を見直すことで治療効果をより高めることができます。
当院では、ひとりひとりの肌の状態やライフスタイルに合わせた治療とスキンケアのアドバイスを行い、ニキビを繰り返さない肌づくりをサポートしています。
「長年治らない」「何度も同じ場所にできる」「ニキビ跡が心配」といったお悩みがある方は、ぜひ一度、お気軽にご相談ください。
酒さ
酒さ(しゅさ)は、顔の中心部、特に鼻や頬、おでこ、あごといった皮脂分泌が盛んな部位に、赤みや毛細血管の拡張、小さなブツブツや膿をもった発疹が現れる慢性の皮膚疾患です。
お酒をよく飲む人にみられるというイメージから「酒さ」という名がありますが、実際には多くの場合、飲酒と関係なく発症します。
中年以降の女性に多くみられる病気で、肌が敏感で赤くなりやすい方や、もともと皮脂の分泌が多い方に発症しやすい傾向があります。
「大人のニキビ」や「顔の赤らみ」として悩まれている方の中に、実は酒さであるケースが少なくありません。
酒さの原因はまだ完全には解明されていませんが、皮膚のバリア機能の低下や毛細血管の異常な反応、皮膚に常在するダニ(デモデックス)や細菌の関与、また免疫の過剰反応などが複合的に関わっていると考えられています。
紫外線や気温の変化、アルコール、香辛料、熱い飲み物などの刺激も症状を悪化させる要因になります。
また、ストレスなどによる自律神経の乱れや、ホルモンの影響も関係するとされており、体調や生活環境によって症状に波があるのが特徴です。
酒さの症状は段階的に進行し、初期には顔がほてるように赤くなる「潮紅(ちょうこう)」がみられます。
この赤みは一時的なものに見えても、繰り返すうちに常に赤らんだ状態が定着してしまうことがあります。
進行すると、鼻や頬を中心に毛細血管が浮き出て見えるようになり、やがて小さな赤いブツブツ(丘疹)や膿をもった発疹(膿疱)が現れるようになります。
赤ら顔にニキビが合わさったような見た目になるため、思春期のニキビと誤解されることもありますが、酒さは毛穴詰まりが原因の一般的なニキビとは異なる疾患です。
さらに進行し、皮膚の厚みが増した状態では、鼻がごつごつと変形してくる「鼻瘤(びりゅう)」と呼ばれる状態があらわれることもあります。
また、酒さは眼にも影響を与えることがあり、眼の充血や異物感、かゆみ、乾燥、涙目、まぶしさなどの症状が出る「眼型酒さ」を発症する場合もあります。
治療は、症状のタイプや重症度に応じて段階的に行います。
赤みや炎症が強い場合には、抗炎症作用のある外用薬や内服薬を用いて、肌の過剰な反応を抑えることを目指します。
近年では、酒さ専用の保険適用外用薬「ロゼックスゲル(メトロニダゾール)」もあり、殺菌・抗炎症効果のほか、免疫抑制作用によって赤みやブツブツの改善が期待できます。
ほかに保険適用となっているものに、イオウ・カンフルローションがあります。
殺菌・角質軟化・収れん作用を持ち、比較的軽症の症例や脂漏性変化を伴う酒さに対して用いられます。
症状が重い場合や炎症が長引く場合には、抗菌薬(テトラサイクリン系やマクロライド系)の内服薬を併用することもあります。
また、日常生活でのスキンケアや刺激を避ける工夫も非常に重要です。
洗顔はやさしく行い、熱すぎるお湯を使わないように注意します。
紫外線は大きな悪化因子であるため、低刺激性の日焼け止めを使ってしっかりと対策することが勧められます。
アルコールや香辛料、過度な入浴なども症状を誘発しやすいため、生活習慣の見直しが再発予防にもつながります。
湿疹・かぶれ
湿疹(しっしん)とは、皮膚に赤みやかゆみ、ブツブツ、小さな水ぶくれ、かさぶたなどが現れる炎症性の皮膚疾患の総称です。
私たちの身のまわりで最もよく見られる皮膚トラブルの一つで、乳幼児から高齢の方まで幅広い年代で発症します。
湿疹を引き起こす代表的なものに、かぶれ(接触性皮膚炎)があります。
かぶれは特定の物質に皮膚が反応して炎症(湿疹)を起こし、皮膚に赤みやかゆみが出る状態を指し、アレルギー性のものと刺激性のものがあります。
アレルギー性接触性皮膚炎の原因には、金属、植物、化粧品、衣類の素材などがあります。
刺激性接触性皮膚炎を引き起こすものとしては、石鹸、洗剤、アルコールなどの物質が挙げられます。
湿疹を引き起こすものとしては、ほかにアトピー性皮膚炎や皮脂欠乏性(乾燥性)湿疹、脂漏性皮膚炎、汗疱状湿疹、汗疹性湿疹(あせも)などがありますが、明確な原因が特定できないこともあります。
総じて湿疹の症状は、最初は赤くなって皮膚がむずがゆくなり、その後、小さな水ぶくれやブツブツ、ジュクジュクした状態に進行することがあります。
かゆみにより無意識に掻いてしまうと、皮膚が厚く硬くなったり、かさぶたや色素沈着が残ったりすることもあります。
症状は部位や年齢、原因によってさまざまに現れますが、多くの場合、慢性的に経過し、よくなったり悪くなったりを繰り返します。
顔や首、手指、腕、足、脇、陰部など、さまざまな場所に起こりやすく、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。
治療に当たっては、まず原因を見極めることが大切になります。
診察では皮膚の状態を丁寧に観察することが基本となります(ダーモスコピーと呼ばれる特殊なルーペを用いることもあります)。
さらに必要に応じて、アレルギーの有無を調べる血液検査や、原因となる物質を突き止めるパッチテストなどを行う場合もあります。
治療の中心は、ステロイド外用薬や保湿剤を用いた皮膚の炎症と乾燥のコントロールです。
かゆみが強い場合には抗ヒスタミン薬の内服を併用することもあります。
また、かぶれなど特定の原因がある場合には、その原因物質を避けることが最も重要な対策となります。
たとえば、金属アレルギーであれば対象のアクセサリーを避ける、洗剤による刺激であれば手袋を使用するなど、生活環境の見直しも症状の改善につながります。
当院では、湿疹のタイプや原因に応じて適切な薬の選択と併せて、日常生活での注意点やスキンケアの方法についても丁寧にご説明しています。
多汗症
多汗症とは、必要以上に汗をかいてしまう状態を指します。
暑さや運動による正常な発汗とは異なり、日常生活の中で特に汗をかく必要がない場面でも大量の発汗がみられるのが特徴です。
多汗症には全身に発汗がみられる「全身性多汗症」と、手のひら・足の裏・脇の下・顔といった限られた部位に起こる「局所性多汗症」があり、特に日常生活に支障をきたす局所性多汗症がよく知られています。
症状としては、例えば人と握手する際に手のひらがびっしょり濡れている、緊張する場面で顔に汗が噴き出す、足の裏の汗で靴下が湿ってしまうといったように、社会生活や人間関係にストレスを感じるほどの発汗がみられます。
脇の下の汗が衣類に染み出してしまうことに悩む方も少なくありません。
さらに多汗症を原因でみると、はっきりとした病気がない「原発性多汗症」と、他の病気や薬の影響によって起こる「続発性多汗症」とに分けられます。
原発性多汗症は10代から20代の若い世代に多くみられ、交感神経の働きが過剰になることが関係していると考えられています。
一方、続発性多汗症は甲状腺機能亢進症、糖尿病、感染症、がんなどの病気や、一部の薬剤の副作用として生じることがあるものです。
診断にあたっては、発汗の部位や程度、発症の時期、症状の持続期間などを詳しく問診し、必要に応じて血液検査や内分泌疾患の検査を行うことがあります。
原発性多汗症と続発性多汗症を区別することが、治療方針を決めるうえで非常に重要です。
多汗症の治療法としては、保険診療の範囲内では、塩化アルミニウム製剤の外用、交感神経の働きを抑える内服薬、外用薬による治療が一般的です。
さらに、脇の多汗症にはボツリヌス毒素製剤(ボトックス)を注射する治療も保険適用となっており、効果が期待されています。
なお、原因となる疾患があれば、まずその治療を行うことが重要で、症状や生活への影響に応じて、適切な治療法を選択することが大切になります。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、かゆみの強い湿疹が良くなったり悪くなったりを繰り返す、慢性的な皮膚の病気です。
子どもの頃から発症することが多い一方で、大人になってから発症するケースも増えており、年齢を問わず悩まされる疾患となっています。
皮膚が乾燥しやすく、炎症を起こしやすいという体質的な特徴を持つ方に多くみられ、またアレルギー体質や家族歴のある方に多い傾向がありますが、生活環境やストレスなども悪化因子として知られています。
主な症状は、かゆみを伴う湿疹です。
乾燥した皮膚に赤みやブツブツ、ジュクジュクとした様子、かさぶたなどがみられ、慢性的にこのような炎症が繰り返されます。
症状は顔や首、肘や膝の内側などに出やすい傾向がありますが、全身に広がることもあります。
重症になると、夜間の強いかゆみで眠れなくなったり、見た目を気にして人に会うことを避けるようになったり、目の周辺がかゆく、強く掻くことで視力障害を起こすこともあるなど、生活の質に大きく影響を与えてしまいます。
アトピー性皮膚炎の発症には、いくつかの要因が重なっています。
まず、皮膚のバリア機能が低下していることが挙げられます。
外部からの刺激やアレルゲンが侵入しやすくなり、炎症を起こしやすくなるのです。
特に「フィラグリン」という皮膚の保湿成分に関係するタンパク質の異常がアトピー性皮膚炎と深く関係していることがわかっています。
フィラグリンは皮膚のバリア機能に必須のタンパク質で、アトピー性皮膚炎の方の中には、遺伝子変異でこのフィラグリンが消失したり減少したりしている方が多いという報告もあり、アトピー性皮膚炎の発症因子の中で、最も頻度の高い因子とされています。
このほか、アレルギー反応を起こしやすい体質や、家族にアトピー性皮膚炎の方がいるという家族歴、さらに心理的ストレスも、悪化の原因となります。
診断の基本は視診ですが、必要に応じて血液検査を行い、体の中でアレルギーがどの程度起こっているかを把握します。
特に、最近ではTARC(タルク)値という血中マーカーが注目されており、炎症の程度や治療効果の判定に用いられています。
そのほか、IgE抗体値や特定のアレルゲンに対する反応を調べる検査も行われることがあります。
治療の基本は、かゆみなどの炎症の症状を抑える薬物療法と、皮膚の保湿を中心としたスキンケア、そしてダニや花粉などのアレルゲンを遠ざける生活環境の調整の3つです。
当院では中波長紫外線治療器(TARNAB:ナローバンドUVB)にて治療可能です。
炎症を抑える薬には、ステロイド外用薬や非ステロイド系の外用薬、かゆみを抑える抗ヒスタミン薬などがあり、症状に応じて使い分けます。
重症例では、デュピルマブ(デュピクセント)という生物学的製剤の注射が保険適用で使用されることもありますが皮膚科専門医の診察が必要となります。
これは、アレルギー性炎症に関わる特定のサイトカインを抑える作用があり、従来の治療で十分な効果が得られない場合に用いられます。
また、スキンケアも重要な治療の柱です。
皮膚の乾燥を防ぎ、バリア機能を保つために、保湿剤の継続的な使用が欠かせません。
さらに、悪化の引き金となるダニやハウスダスト、衣類の刺激、汗などへの対策、ストレス管理、規則正しい生活も重要です。
患者さま一人ひとりに合わせた、包括的な管理と継続的なケアが、アトピー性皮膚炎のコントロールには不可欠です。
円形脱毛症
円形脱毛症は、突然円形に髪の毛が抜けてしまう自己免疫疾患のひとつです。
主に頭部に発症しますが、眉毛やまつげ、体毛などにも脱毛がみられることがあります。
年齢や性別にかかわらず発症しますが、若年層に多い傾向があります。
軽症の場合は自然に治癒することもありますが、広範囲に及ぶ場合や慢性化するケースでは治療が必要です。
症状は突然、境界がはっきりした円形の脱毛斑として現れ、1か所だけでなく複数の部位に同時に起こることもあります。
脱毛の範囲によって、「単発型」「多発型」「全頭型」「汎発型」などに分類され、広範囲な脱毛になるほど回復に時間がかかる傾向があります。
脱毛部の皮膚は正常で、赤みやかゆみなど炎症は伴いません。
また頭髪の異常以外に、爪に小さなへこみ(点状陥凹)がみられ場合があるのも円形脱毛症の特徴のひとつです。
主な原因は自己免疫反応とされており、自分の毛根を異物と誤認して攻撃してしまうことで脱毛が引き起こされます。
遺伝的な体質やアトピー素因、ストレス、感染症なども関与していると考えられています。
また、甲状腺疾患や膠原病など、ほかの自己免疫疾患との関連も指摘されています。
近年は、円形脱毛症を「自己免疫性炎症性疾患」として捉え、全身的な観点からの評価と対応が求められるようになっています。
治療は脱毛の範囲や重症度に応じて異なります。
軽症であれば、ステロイド外用薬や発毛促進作用のあるミノキシジル外用薬が用いられます。
当院では中波長紫外線治療器(TARNAB:ナローバンドUVB)にて治療可能です。
さらに、急速に進行する場合にはステロイドの内服や注射、免疫抑制剤の内服を用いることもあります。
最近ではJAK阻害薬という新たな選択肢も登場し、重症例での効果が期待されています。
治療と並行して、生活習慣の見直しやストレスケアなども重要なポイントとなります。
ウイルス性いぼ・老人性いぼ
ウイルス性いぼ(尋常性疣贅)とは
ウイルス性いぼは、医学的には「尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)」と呼ばれ、主に手足や指にできる皮膚の小さな隆起した病変です。
表面がざらざらしており、皮膚と同じ色ややや茶色がかった色をしていることが多く、押すと軽い痛みを伴うこともあります。
大きさは数ミリから1センチ程度で、単発のものから複数にわたって広がるものまでさまざまです。
ウイルス性いぼは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスが皮膚の小さな傷口などから侵入することによって発症します。
ウイルス感染によって皮膚の細胞が異常に増殖し、いぼが形成されます。
特に、プールや体育館の床、共用のスリッパなどから感染することもあり、裸足での生活が多いお子さまや、スポーツをする学生の方、手荒れがある方などは感染しやすい傾向にあります。
また、免疫力が低下していると、いぼが治りにくくなることもあります。
ウイルス性いぼの治療は、基本的に皮膚科での局所治療が中心となります。
代表的な方法は、液体窒素による凍結療法です。
いぼの部分を低温で凍結し、壊死させることで除去を目指します。
数回の治療が必要になることが多く、少し痛みを伴うこともありますが、安全性の高い方法です。
ほかにも、ヨクイニン(漢方薬)の内服や、塗り薬による治療が併用されることもあります。
ウイルス性いぼの予防には、皮膚に傷をつくらないよう注意することや、プールや共用スリッパなどでは清潔なサンダルを履くこと、手足を常に清潔に保つことが有効です。
老人性いぼ(脂漏性角化症)とは
老人性いぼは、「脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)」と呼ばれ、加齢に伴って皮膚にできる良性の腫瘍です。
見た目は平坦なものから隆起したものまでさまざまで、色も薄茶色から黒色まで幅があります。
表面がかさかさとした角質に覆われており、「シミのようなものが盛り上がってきた」「いつの間にか増えていた」といった訴えで来院される方が多くみられます。
かゆみを伴うこともありますが、基本的には自覚症状はあまりありません。
この老人性いぼは、主に加齢による皮膚の代謝の変化や、長年にわたる紫外線の影響などが原因とされています。
皮膚の表面にある角質層が過剰に増殖することで、いぼのような隆起が形成されます。
特に、顔、首、胸、背中、手の甲など、紫外線を受けやすい部位にできやすいのが特徴です。
年齢とともに増えていくことが多く、40代以降から目立ちはじめ、70代では多くの方に見られるようになります。
老人性いぼは基本的に良性であるため、治療の必要はない場合もありますが、美容的な理由やかゆみなどの症状がある場合には除去を検討します。
保険診療では、液体窒素を用いた凍結療法や、電気焼灼、局所麻酔下での外科的切除などが行われます。
注意点として、見た目が似ている悪性腫瘍(皮膚がん)との鑑別が必要な場合があるため、自己判断で処置せず、まずは皮膚科専門医の診察を受けることが大切です。
また、再発することもあるため、治療後も肌の状態を定期的に確認することが勧められます。